タンザニア | アルーシャ国立公園 | 2001.02.17 - 2001.02.21 |
メル山登頂 メル山はアルーシャ国立公園内にあり、タンザニア国内ではキリマンジャロについで2番目に高い山である。キリマンジャロ山までわずか60キロという好条件の為、キリマンジャロ登頂の直前に、高度になれるための練習に登る登山客が多い山でもある。高山病に何度も悩まされた(特に私が)私たちも、まずメル山で体慣らしをすることにした。 アリューシャ国立公園・メル山にたどり着くまで 私達はモロッコからアムステルダム経由でナイロビに降り立った。モロッコからナイロビそしてトルコへ向かう私達にとって一番安い航空券はアムステルダム経由で、カサブランカ・アムステルダム・ナイロビ・アムステルダム・イスタンブールというルートだったのだ。 まずナイロビで食料を買ったり、寝袋等のキャンプ用品をレンタルした。ナイロビは治安も悪く、数多くの客引きがうっとうしく用事を済ませたらさっさとタンザニアへ向かうことにした。 タンザニアの登山のベースとなるアリューシャとモシまでの交通手段はいくつかあるが、観光客に一番人気なのは、一番早くて安全なシャトルバスだ。ロンリープラネットのガイドブックによるとリバーサイド・シャトル、ダバヌ・シャトル、アリューシャ・エクスプレスの3社がある。タンザニアのアリューシャまでの値段は1000タンザニア・シリング(約 US$14)のはずだが、どの会社も最初はかなりの値段をふっかけてくるという。リバーサイド・シャトルが出発するノーフォーク・ホテルに行ってみると、案の定ホテルのベルキャプテンはシャトルバスチケットの値段はUS$30だとふっかけてきた。そんな高いわけはないと笑うとUS$25に突然値下がりする。いや1000シリングのはずだと言いはると、ベルキャプテンは友達のいるダバヌ・シャトルバス会社に電話をかけ始めた。ダバヌの人はバス代はUS$20と電話で言い、1000シリングは去年までの値段だという。ウェスはそれなら他の会社に行ってみるからいいですと言い電話をきった。ホテルを出て数分も歩かないうちに誰かが後ろから追いかけてきた。先ほどのホテルのベルキャプテンだ。「ダバヌは1000シリングでいいと言っています。彼らのオフィスをお教えしましょう。」 タンザニアからの帰りのバスも同じようなやりとりが必要なので、ロンリープラネットのおかげでガイドブックを2冊買ってもおつりが出るくらいのお金が助かったことになる。良い投資だ。アリューシャまでのバスは朝の8時と午後2時の2本がある。国境での出国審査と入国審査を含めて約5時間かかる予定である。私達は朝8時のバスに乗り、アリューシャには1時ちょっと前に到着した。 ガイドブックによるとアリューシャの町からメル山のあるアリューシャ国立公園までの一番安い行き方は、アリューシャの町からモシ方面へローカルバスに乗り、アリューシャ国立公園への分岐点であるウサリバー村の1キロ東で降ろしてもらい(1000シリング:約130円)、そこからは国立公園を通ってヌガレ・ナンユキという村まで物資を運ぶトラック等に乗せてもらう(2000シリング:約260円)ことだ。 ダヌブ・シャトルの人に話したら、国立公園への分岐点まで乗せてもらうことで話がついた。これでもう大丈夫と思ったのが早急だった。まず、モシ行きのダヌブ・シャトルはあと1時間待たなくてはいけない。この1時間の間に、嘘を並べ立てて私たちをアリューシャ国立公園まで連れて行こうとする客引き攻撃にあったのだ。しつこい客引きならモロッコでかなり慣れた私たちだが、ここアリューシャの客引きは並大抵ではない。身の危険を覚える所まではいかなくても、かなりそれに近い状態になる。「私はダヌブ・シャトルと契約している者です。モシ方面へ行かれる人々を私の車で運ぶ事になっています。」「分岐点から国立公園までの車なんて一台も通らないよ。」「国立公園へは歩いていけない。動物に食べられてしまうから。」「私はランドローバー持ってます。US$50で乗せてあげましょう。」などと叫びつづける20人位の大柄な黒人男性達に囲まれた私達だったが、ダヌブ・シャトルの運転手は「この人達の言うことは何も聞かなくて良い。あなたたちは次のバスが来るまであのホテルで休んでいてください。」と忠告してくれた。 ようやくモシ行きのバスがやって来て乗り込んだのだが、ここでも最後の一押しが待っていた。別のダヌブ・シャトルの従業員に「アリューシャ国立公園までは車を雇ってはどうですか。その方が安全です」と言われたのだ。どうして誰も彼も私達の自由に行かせようとしてくれないの!この時点で車代はUS$30まで値段が下がっていたのだが、私は意地でも自分達の力で行けるかどうかを試したかった。「私たちは冒険をしたくてここに来たのです。途中で降ろしてください。」 国立公園への分岐点で降ろしてもらうと既に10人ほどの地元の人が次のバス・トラックが来るのを待っていた。中には旅行会社に働く人二人がいて、観光客が車を雇わないで来たのを見るのは始めてだとやけに驚かれた。しかし、ウェスがあなたたちと同じ手段で旅をしたかったからですと説明すると一応納得したようだった。彼らとおしゃべりしながら通り過ぎる車全てにヒッチハイクを試みると、早くも3台目の車が停まってくれた。運転手は近くに住むドイツ人だった。ガス代にお金を払いたいですと申し出ても受け取ってくれなかった。彼の行き先は丁度私たちが宿泊したいと思っていた宿:モメラ・ワイルドライフ・ロッジだったので、結局宿までただの交通手段が見つかったことになる。 モメラ・ワイルドライフ・ロッジはメル山登頂の開始点モメラ・ゲートから一番近い(早歩きで30分・普通に歩いて45分)宿である。値段は高いがきれいに手入れされた庭からは花々のいい匂いがただよい、プールもついている。部屋は個別のバンガローになっておりお湯も出る。いままでの安宿と比べるとまるで天国に来たみたいだった。ロッジ近くにはきりんが数多く出没し、またロッジまでの車からはバッファロー、シマウマ、キリン等を見かけた。 宿にチェックインした後歩いてモメラ・ゲート前にある国立公園事務所へ行き、次の日の登山に必要なパークレンジャーの手配をした。 メル山登頂 翌日の朝約束の時間10時に国立公園事務所へ行き、事務所が手配したパークレンジャーと会った。事務所ではダーエスサラームに住むドイツ人ヨルゲンが待っており、一緒に登ってパークレンジャー費一日15ドルを割り勘しないかと相談された。もちろん!ヨルゲンはとても気楽に付き合える人で、山での食事を一緒に作り、食料を分け合って楽しんだ。 第1日目:モメラ・ゲート(1500メートル・4921フィート)からミリアカンバ小屋(2514メートル・8248フィート)まで14キロの道を歩く。途中きりん・バッファロー・象・イボイノシシ等に出会うことが出来る。 第2日目:サドル小屋(3570メートル・11,713フィート)まで急な4キロの道を歩く。この日の午後に調度良い登りは、サドル小屋から45分位で登れるリトル・メル・ピークだ。夜寝る小屋より高い標高で少し体を慣らしてから小屋に戻ることで、夜高山病の症状が出るのを防ぐ。この小屋の標高は既に私の登った最高記録だ。今まで3000メートルを越す標高で一泊した時は必ず高山病の症状が出て、良く寝れなかった。今までで一番高い所で一泊するのはかなり不安だったが、午後の高度に対する体慣らし登山が良かったのか、この日は始めて頭痛も吐き気もまったくなく大丈夫だった。 第3日目:この日はメル山頂上(4,566メートル・14,980フィート)までの約5時間の長い登りが待っている。頂上に登った後は、サドル小屋かミリアカンバ小屋でもう一泊してからモメラ・ゲートへ戻る人がほとんどだが、中には一日でモメラゲートまで戻る人もいる。日の出を見るためと、午後の強い日差しの中で歩くのを避けるために、私たちは午前2時頃から登り始めた。頭痛と吐き気がなくてもやはり高度が高いせいかあまり良く寝れなかった私は、1時半に起きた時どうしてこんな事しているのだろうとついつい自問自答してしまった。頂上より随分手前で日の出を見るが、あまりに寒くてゆっくり見ていられない。頂上まで後一歩という所には大きな岩が行く手を塞ぎ、数歩進いて「ぜーはーぜーはー」と言いながら数分休むを繰り返した。ようやく頂上に着いた時には、寒さと気分の悪さで動くことが出来なかった。すぐ後から登ってきた年配のイギリス人夫婦がおめでとうと握手しに来てくれたが立つ事も出来ない。この夫婦が分けてくれたイギリスの甘いお菓子(名前は忘れたが、エベレストの頂上でイギリス人登山家ヒラリーが食べたと日記に書いて一躍有名になったとか)のおかげでこの後降りる元気を取り戻すことが出来た。降りる途中今度は頭痛に悩まされたが、今度はウェスが熱射病の手前の症状で調子が悪くなり、頭痛いと言っていられなくなった。サドル小屋にお昼頃着き、暖かい紅茶とスープを飲むと二人とも随分調子が良くなった。この日の経験はキリマンジャロへ向けての良い教訓となる。詳しくは下記のメル山登頂での教訓を参照。この日はキリマンジャロ登山へ向けて高度に慣れるために、サドル小屋で一泊する。他の登山客はほとんどもっと高度の低いミリアカンバ小屋まで降りていった。 第4日目:サドル小屋からモメラ・ゲートまでの降りは快適な半日ハイキングだ。 モシ(キリマンジャロ登頂のベース)へ モメラ・ゲートからキリマンジャロ登山のベースとなる町モシまでの交通手段の確保は、嘘の情報を与える客引きがいない為随分楽である。いらない荷物をモメラ・ワイルドライフ・ロッジに預けてきたので、ウェスが取りに行く間公園事務所で1時間程休憩した。公園事務所には常駐しているパークレンジャーが数人おり、メインロードまでの交通手段を確保したいと言っておけば道を通り過ぎるトラック等に声をかけてくれる。ウェスが宿から戻ってきて数分もしないうちにアリューシャへ向かうトマトを満載したトラックが停まり、一人1500シリングでメインロードまで乗せてくれることになった。メインロードの公園への分岐点からはバス停がある。バスを待ちながらヒッチハイクを試みると、10分後くらいにタンザニヤ人の運転するミニバンが停まり、ひとり1000シリング(バスと同じ値段)でモシまで乗せてくれることになる。 メル山登頂:ビジターの為情報 メル山を登る為には、国立公園入場料を払い、ライフル銃を携帯するパークレンジャーと共に登らなくてはいけない。また近くにお店がないので食料やキャンプ用品は前もって手配しておく必要がある。パークレンジャーとポーター(必要ならば)はモメラ・ゲートの国立公園事務所で手配出来る。
登山時に特に注意しなくてはいけない事は、寒さから身を守ること、過度の紫外線から皮膚を守ること(300メートル高度が上がると紫外線の量が30%増えるといわれる)、充分な飲み水を確保することだ。また、高山病の恐れもある。綿製品を身につけないことも大切である。汗を吸い取った綿は、気温が下がった時に、体の温度を急激に下げてしまう恐れがある。 メル山の山小屋には、マットレス付の2段ベットがある。トイレ・水道・ピクニックテーブルはあるが調理具と食料は全て持参しなくてはいけない。山の上の方では昼間は半そででも暖かい位の気温だが、夜は氷点下に下がる。 メル山登頂での教訓
メル山登頂経費一覧
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アルーシャ国立公園(メル山) | |
登山第一日目に通った、モメラゲートからミリアカンバ小屋へ向かう南ルートの登山路には、こんなに大きなイジジクの木が茂っている。両手を広げてポーズをとるウェス。 | |
第一日目の宿ミリアカンバ小屋と朝日に染まるメル山。この小屋からはキリマンジャロの隣りから登る朝日を見ることが出来る。 | |
第一日目の宿についてくつろいでいると、きりんが遊びにやって来た。ここのきりんは日本の山猿みたいな感覚で現れる。 | |
二日目にサドル小屋まで向かう途中小休憩するサミュエル・ヨルゲン・私。ほとんど使うことがないというサミュエルの持つライフル銃は、万が一動物が襲ってきたときに動物を脅かすためのもの。 | |
キリマンジャロ(左に見える影)と朝日。なだらかな傾斜のキリマンジャロを見るとこれがアフリカ最高峰で5895メートルもあるとは信じがたい。 | |
メル山の頂上でタンザニアの国旗を背にして。この写真を一枚取るのも困難なほど私は非常に参っていた。 | |
登山チーム:左からパークレンジャーのサミュエル、ウェス、ヨルゲン、ヨルゲンのポーターのレミーと私。 |
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