スイス Wildstrubel Traverse 2000.7.30 - 2000.7.31

恐怖の道

スイス・ルツェルンに住む友人のご主人が薦めてくれたのが、このWildstrubel Traverseと呼ばれる、スイス南部のValais valleyと中央部のBernese Oberlandを分けるBerneseアルプスを越える、約1.5日間のハイキングコースである。

コースの全長は24キロほどしかないが、一日の標高差はかなりある。標高差は、南(モンタナ)から始めた場合は、1390メートル、北(レンク)から始めた場合は、1686メートルである。

このコースの途中には、命がいくつあっても足りないような、恐ろしい場所に登山道が作られている。がけの真ん中に足場を立て付けてあったり、足場の悪い急な山肌に、細い登山道が無理やり作られていたりする。高所恐怖症の私には、かなりきついコースであった。ウェスは機会があれば、もう一度やってみたいというが、私は二度目はちょっと遠慮したい。

私たちは、Berneseアルプスの南にある、スキーリゾート地モンタナから出発した。最初の2時間は、恐怖の道が所々ある平らな登山道を歩いた。その後急な道が始まると、恐怖感がぐっと減る。緑の森から、岩山へ、そして雪の中へと変化する景色の中を4時間ほど歩いていくと、標高2791メートルにある、山小屋Wildstrubelhutteへ到着した。

この山小屋は飲み水もなく、トイレのふたを開けると、崖が見えるすごい所にあるが、夕食と朝食を食べさせてくれる。日本の山小屋のように、マットレス一枚に二人が寝る狭さだ。運悪く隣りに寝た人のいびきがすごいくて、私たちはほとんど一晩中寝れなかった。多分山小屋中の人が、彼のいびきで寝れなかったであろう。

5時ごろ、すでに多くの人が朝食の場へ出かけた後、私たちも寝られないまま横になっているのがいやになり、起き出した。7時には準備が整い、北へ向かって歩き出した。北へ向かう登山道も、恐怖の道が数箇所あったが、下りは2時間くらいで終わってしまった。

一歩足を踏み外すと、崖の下へまっさかさまへ落ちる。落ちたら、骨を1・2本折るだけなら幸運だ。

いったい何を考えて、ここに登山道を作ろうと思い立ったのだろうか。腰をまげないと通れない、崖の真ん中に足場を作るには、想像を絶する忍耐と体力が必要だっただろう。

ようやく落ちても死なないだろうと思える所へたどり着く。山小屋にたどり着くまであと3時間くらいこのような道を歩いていった。

一日目の中間地点で、後ろを振り返ると、Valais valleyが眼下に広がっていた。

宿泊したWildstrubelhutte。真夏でも氷点下以下に落ちる外気から、ハイカーを守ってくれるありがたい存在である。

戻る2000年旅行記目次スイスの地図ホーム

  Copyright © 2000-2002   Wes and Masami Heiser.   All rights reserved.