スイス・フランス・イタリア モンブランの旅・その1 2000.7.5 - 2000.7.23

モンブランの旅・その1

スコットランド・ハイランドのB&Bのオーナー、エリザベスに会うまで、Tour of Mont Blanc(モンブランの旅)という言葉は聞いたことがなかった。今回の旅は、彼女が紹介してくれた、Andrew Harperの著書「Tour of Mont Blanc」を片手に行ったものだ。

Tour of Mont Blanc(以下TMBに略)はこの本だけでなく、一般的に使われている言葉で(フランス語では、Tour de Mont Blanc)、モンブランと近辺の山々(Geant、Jorasses、Dolent、Verte、Chardonent、Grouter、d'Argentiere等)の周りを、11から12日間かけて一周するハイキングコースのことを指す。古くから、多くの登山客に愛用されており、登山路もきれいに整備してある。

TMBのルートは1本だけでなく、途中枝分かれするので、自分の疲労度に合わせて、ルート選びが可能である。スイス・フランス・イタリアの国境を歩いて越えることになるが、山を越えて次の町に着くと、たいてい1軒以上の宿があり、暖かい夕食とシャワーが一日の終わりに待っている。宿がひとつしかない所に泊まる予定なら、前日か当日出発する前にでも空きがあるか電話で確かめておくと、ルート選びがしやすい。

Andrew Harperの著書「Tour of Mont Blanc」は小型で比較的軽いガイドブックなので、これを持って周ることをお勧めする。登山路の見つけ方や、途中の宿の情報(町名、宿名、電話番号)、旅の準備の情報など、細かい情報が手に入る。

スタート地点は、どこから来るかにより、変わってくる。私たちはルツェルンの友人宅に不要な荷物を預けてから来たので、一番便利で安い(スイス内の鉄道パスがある為)開始点は、Champexという街だった。

本の著者は、イギリス人なのでロンドンから来た場合に一番便利という観点から、フランスのles Houchesという街からの出発を進めている。この街はスイスのジュネーブやフランスのパリから来る場合も便利な場所にある。また、スイスのシャーモニー(Chamonix)からも、ケーブルカーで登山路まで行くことが出来るし、イタリアから開始するなら、Coumayeurがバスのアクセスのある一番大きな街であろう。

ハイキングには必要ない荷物は、電車の駅等での荷物預けを利用すると良い。シャーモニーの駅では、一日20フランスフランで長期間、荷物を預けられる。また、ガイドブックによると、スイスの各駅でも荷物預けがあるそうだ。

TMBルート上には、現地通貨の現金しか使えない所がある。よってスイスフラン・フランスフラン・イタリアリラを多少持ち込むことをお勧めする(2万円づつ位が適当と思われる)。シャーモニーのような大きな街に来ると、Cirrus や Plus マークの付いている銀行カードで現地の現金を引き出すことが可能であり、また両替屋もたくさんある。

地図は、携帯するととても役に立つ。TMBの道は確かに見つけやすいが、上記の本にある地図は、必要最低限の街しか載っていないため、不慮の事故が起きて、一番近くの町はどこかを探すときや、宿泊予定の宿が満室だった時、どの町に代わりに下りればよいかが、分からない。また、すばらしい山々が見える時に、いったいどの山をみているのか調べるのにも役立つ。

私達は、IGN (Institut Geographique National) 発行の以下の地図を利用した。

  • ST-GERVAIS (3531 ET) - 表紙が青色の縮尺が1:25,000のもの
  • CHAMONIX (3630 OT) - 表紙が青色の縮尺が1:25,000のもの

この二つの地図では、一部載っていない部分がある。イタリアのCourmayeurの東から、La Vacheyの西まで、距離にして10キロ弱が抜けているが、ガイドブックがあればなんとかなる。

また、緑色の表紙の地図もあり、縮尺が1:100,000であるが、これでもTMBのハイキングには充分だと、利用している人は言っていた。緑の方が青よりも、安い。(スイスFauclazの町で、青が19スイスフラン、緑が11スイスフランだった。)緑の地図では、Annecy/Lausanne と Grenoble/Mont-Blanc のふたつで、TMBルートのほとんどをカバーしている。

ハイキングコースのマークは、国によって変わる。スイスでは、白・赤・白の3本の線と赤の矢印が使われる。フランスでは、赤と白の線で、イタリアでは、オレンジ色の丸が目印となる。

以下の旅行記では、これから同じようなハイキングをしたいと思われる方に参考になるよう、毎日の経験を日記形式につづったものである。Andrew Harperの著書には、宿の値段が載っていないので、私達が旅行を始める前、どの通貨で(スイス・フランス・イタリアでハイキングする為)、どれくらいの現金を持ち歩けばよいのかが、分からず戸惑ったので、ルート一覧には各宿の料金(寮と個室)とクレジットカードが使えるかをのせた。この値段は2000年7月現在なので、その後値上がりすることは確実であるが、あくまでも参考のために記載する。

略語一覧:

  • CHF: スイスフラン
  • FRF: フランスフラン
  • ITL: イタリアリラ
  • DB: 夕食・朝食付
  • V: VISAカードOK
  • M: MASTERカードOK

第1日目(2000年7月5日) Montreux(スイス)からArpette(スイス)

前日はシヨン城(詩人バイロンの詩:シヨンの囚人で有名らしい)のある、スイス・モントルーの街に泊まったので、この日は朝8:20の電車でOrsieresまで行く(途中Martignyで乗り換え)。OrsieresからChampexまでは、山道をバスで登る。Champexには、10時くらいに到着。

Champexの街にも宿泊する所はたくさんあるが、私たちはTour of Mont Blanc(以降TMBに省略)の登山道を30分ほど歩いた所にある、Arpetteまで行く。途中、信じられない位透明な小川に沿って歩いた。その日のうちに、Arpetteまで行く場合、Champexのバスの停留所の近くに簡単な地図があるので、目を通しておくと便利だ。また停留所の隣りの駐車場奥に、公衆トイレがある。

Arpetteにある、ドミトリーと個室のある宿は、すばらしい景色の見える場所に位置している。宿はひとつしかないので、個室が欲しい人は予約をいれておいた方がいいようだ。キャンプも出来る。(一人6スイスフラン。専用のトイレが使える。シャワーを使う場合は2.5スイスフランを別に払う。)

宿泊費には夕食と朝食がついてくる。お昼のお弁当は別料金(ひとり15フラン)。夕食は、フォンデュか豚肉料理かを選ぶ。

 

宿泊した、Relais d'Arpetteの前で。

次の日は後ろに見える山を越えて、山の向こう側の町へハイキングする。

今日の宿: Relais d'Arpette
Tel: 027-783-1221
営業期間: 6月1日 ~ 10月15日
この宿一軒しかないので予約要
個室: (一人)CHF 70 DB
ドミトリ: (一人)CHF 52~57 DB
弁当: (一人)CHF 15
クレジットカードOK(V/M)

第2日目(2000年7月6日) Arpette(スイス)からForclaz(スイス) 15.5KM 

朝8時半過ぎに出発する。宿に泊まっていた人々は、ほとんど出かけた後だった。この日は標高1627メートルから出発し、3時間くらいかけて、標高2665メートルのFenetre d'Arpetteまで登り、山の向こう側に下りる。宿泊先のForclazの町(標高1526メートル)に下るには、約2時間半かかった。お昼に1時間弱休憩したので、Forclazには、3時50分に到着する。

前日の宿からはるか遠くに見えた山を汗だくになりながら登る途中、後ろを振り返ると、前日には、山のふもとの標高の低い山々に隠れてみえなかった、雪をかぶった山々が見え出す。Fenetre d'Arpetteの向こう側には氷河が見えた。下りはその氷河を脇に見ながら、しかし道は滑りやすい石があちこちにあり、足元にも注意しながら下ることになる。
 

Fenetre d'Arpette

Trient Gracier

この日はこの氷河にそって2時間ほど歩いた。非常に規模の大きい氷河である。

今日の宿: Hotel du Col de la Forclaz
Tel: 027-722-2688
営業期間:一年中
個室: (一人) CHF
68 DB から
ドミトリ: (一人) CHF 48 D B
弁当: (一人) CHF 10~20
クレジットカードOK(V/M)

第3日目(2000年7月7日) Forclaz(スイス)からChamonix(フランス)

おととい泊まった宿から電話した所、今日と明日は週末のせいか、TMBルート上の宿は、歩いてたどりつける所は、すべて満室だった。しかたなく、TMBルートからはずれて少し大きめの町Argentiereのドミトリーに予約をとった。

今日は天気があまり良くないので、Forclaz からCol de Balme までは、ガイドブックにはのっていない、短いルート(IGNの地図には両方載っている)をとることにした。宿前の標識によると、Col de Balme まで、ガイドブックで紹介されている道は4時間、近道は3時間かかる。

Forclaz から Trient の町まで、標高200メートルくらい一度降りると、あとはCol de Balme までジグザグ道を折り返しながらひたすら登る。昨日と違い、この道はすべりやすい岩場がないので、体力の勝負だけである。私は昨日からかかとが少し痛かったので、靴擦れ用のパッド(モールスキン)を貼って歩いたが、ますます痛みがましてくる。

2時間半でCol de Balme へ到着。晴れていれば、モンブランが良く見える場所であるが、今日はモンブランは雲に隠れてしまっていた。しかし、他の山々は見えたので、昨日土産物屋で買った、絵葉書と見比べながら、どれがどの山かを確認する。

昨日からウェスが風邪気味なのと、私の靴擦れが心配なので、Col de Balme からはスキーリフトとゴンドラを乗り継いで、La Tour の街まで降りる(片道:51フランスフラン、La Tour からCol de Balme の往復は72フラン)。La Tour から Argentiere まで歩いて行くが、予約していた宿は信じられない位、おんぽろだった。明日は一日シャーモニーで観光することにしたので、今日はシャーモニーまでバスで行ってしまうことにする。

バス停へ行くとシャーモニー行きのバスは20分前に行ってしまい、次のバスまでは2時間近くある。まいったなあ、と思っているとシャーモニー行きのバスがやって来るではないか。ウェスの風邪といい、私の靴擦れといい、Argentiere の宿といい、まるで今日は早くシャーモニーへ行ってくださいと誰かに言われたようだ。いったいシャーモニーでは何が待っているのだろう。
 

登りの途中、Col de Balme を望む

Col de Balme からの眺め

今日の宿: Hotel du Louvre
Tel: 04-5053-0051
営業期間:一年中
個室: (一室) FRF 262~328
朝食:(一人)FRF 35
クレジットカードOK(V/M)

第4日目(2000年7月8日) 休息日 Chamonix(フランス)

昨日シャーモニーの町に来て、なんとなく足が向いた方向で見つけた安めの宿に空きがあり、そこに宿泊した。宿で朝食を食べている時、モンブランに登頂する予定のグループに会った。ガイドはフランス人で、パンフレットをもらうと輝かしい登山暦の持ち主だった。スケジュールがうまくあえば、彼のガイドの元で、訓練をしてみたいと話し合う。彼(Yves Astier)のビジネスのホームページは(http://perso.wanadoo.fr/yves.astier/)である。

グループの中のアメリカ人のひとりは、私達がカリフォルニアで住んでいた地域の出身で、北アメリカの最高峰マッキンリー、エベレスト、南アメリカの最高峰アコンカクア、アフリカの最高峰キリマンジャロに登頂した男性だった。モンブランに登頂した後は、ロシアに飛び、コウカサス山脈のヨーロッパの最高峰Elbrus にチャレンジするという。後は、オーストラリアと南極の最高峰を征服すれば、全ての大陸の最高峰の登頂に成功することになる。彼の名前はKurt Wedberg で、Sierra Mountaineering International という、山のガイドをしたり、企業や組織相手にスピーチをするビジネスをしている。

こんなに本格的な登山家に出会ったのは初めての経験で、ふたりとも感激した。シャーモニーに昨晩来て、この宿に偶然泊まって本当に良かった。

シャーモニーでは、いかにも観光客ずれしたレストランが多い中で、お勧めレストランを見つけた。前菜・メイン・チーズ・デザートのコースで110フランスフラン(日本円約1650円)で、とびきりおいしい。TMBを終えた所で、打ち上げにこういうすばらしいレストランで食べたかったが、スイスのChampexでは、ここまでのレベルの料理は望めないだろう。週末には、予約を入れた方がよい。


レストラン: Le Panier des 4 Saisons
電話: 04-5053-9877
ディナー営業時間: 19:30 ~
住所: 24, galerie Blanc Neige rue Paccard
 

昨日の夜から降り続いた雨が夕方にようやくやむ。9時半近くに、夕日に輝くモンブランの姿が10分ほど現れた。新しく降り積もった雪で、より一層神々しく見える。そしてまたすぐに、雲の陰に隠れてしまった。

第5日目(2000年7月9日) 再び休息日 Chamonix(フランス)

ウェスの体調がまだ良くないので、もう一日お休みする。天気が良ければ、ゴンドラに乗って、Aiguille du Midi まで行こうと思っていたが、山の上は霧がかかっているのでやめる。ちなみに、Midi までのゴンドラの往復券の値段は200フランスフランである。


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