キルギス共和国 カラコルとその周辺 2002.08.10 - 08.27

温泉とテルスケイ・アラ・トー山脈

カラコルはテルスケイ・アラ・トー山脈トレッキングのベースとなる町である。カラコルの町自体は見所が少ないが、周りの山や温泉がすばらしく日帰りで見られる場所もいくつかあるので、予定の1週間滞在が大幅に延び、2週間以上もいることになった。テルスケイ・アラ・トー山脈でトレッキングをするにはキャンプの装備が必要である。また現在入手できる地図上では登山道が分かりづらく、標識がまったくないので、地図を持っていても出かける前にすでに歩いた他の観光客等に地元の人に確認した方が良い。登山客が少ないので、通り過ぎる他の人々に道を確認する事が出来ない場合が多い。

キャンプ用品のレンタル

キャンプ用品のレンタルは、カラコルの町の中心トクトグール通りのデパート斜め前にあるNobinomadという観光案内所で出来る。一日あたりのレンタル料は、ドームテントが3USドル、コンロが1.5USドル、マットが0.5USドルだった。

トレッキング・パーミット

トレッキングをするにはパーミット(3日間8USドル、30日間30USドル)が必要だが、パーミットを発行する人とチェックする人が同じで一人しかいない為、パーミットの発行に時間がかかることもあるようだ。海外のキルギス大使館や地元の話によると、このトレッキング・パーミットを廃止する傾向にあるようなので、将来は必要なくなる可能性が高い。また国境近くでトレッキングをする場合にはこれ以外にボーダー・パーミットを取得する必要がある。ボーダー・パーミットの取得には数日間かかる。パーミットはヤクツール(手数料なし)やNobinomad(手数料2USドル)で発行してもられる。又は発行する役人の家の住所を教えてもらい直接発行してもらう事も可能。

アルティン・アラシャン
アルティン・アラシャン渓谷は、カラコル近辺にある5つの渓谷の中でも一番人気のある渓谷である。標高3000メートルにあるアルティン・アラシャンには、日本のものに近い温泉がある。カラコルから東に10キロの所にある、アクスという町までバスで行き、そこからアラシャン川沿いに14キロ歩く(運が良ければ一人2ドル位で、通りがかりのジープに乗せてもらえる)と、温泉宿が4軒ほどあるアルティン・アラシャンにたどり着く。この写真はアルティン・アラシャンから4260メートルの万年雪をかぶったパラータ山方面を撮ったものだ。私達は道路から川を渡った所にある、写真右手のキルギス人家族の小屋に一人100ソム(約2USドル)で泊まった。彼らは家族専用の温泉小屋を持っており、一人20ソム(約40セント)で窓からすばらしい山の景色を眺めながら、岩風呂の温泉を楽しめる。ただし、石鹸やシャンプーは使用できない。私達は自分で食料を持っていったので、外の台所を使わせてもらい自炊した。この家では多分食事の用意はしてくれないと思うが、他の宿では、一食2ドル(町から2番目に近い宿)から5ドル(一番町から近い宿)で食事を作ってくれる。公共の温泉小屋は一人50ソム(約1USドル)である。 標高が高いため、8月でも夜はかなり冷え込み、長袖と寝袋が必要であった。温泉を浴びるにはちょうど良い温度である。アルティン・アラシャンに住む人々は夏場6月から9月のみ山にやって来て、それ以外の時期はカラコル等の町へ戻るそうである。なので宿泊は6月から9月しか出来ない。

アルティン・アラシャンからは登山のオプションがたくさんある。きついがすばらしい眺めが見られる、氷河湖であるアラクル湖を見下ろす峠まで1300メートル日帰りで登るコースや、1泊キャンプをして凍える冷たさの川を何度か渡り、氷河まで歩くコースなどがある。私達がアルティン・アラシャンへ訪れたときは天気が悪く、残念ながら遠くへ行くトレッキングを果たす前に食料がなくなり、近くの山を半日登っただけで、カラコルの町へ戻った。数日後嘘のように天気が良くなり、今度はカラコル渓谷からアラクル湖へ行き、そこから峠を越えてアルティン・アラシャンへ下りるトレッキングをした。

これがアルティン・アラシャンの温泉。きついトレッキングの後の温泉ほど気持ちよいものはない。小屋は中から鍵をかけられるので、家族風呂のように使える。ただし、石鹸とシャンプーは使えない。

アルティン・アラシャンへの行き方

オプション1:カラコルのメインバザールから(要確認)アルティン・アラシャン分岐点を通過し、近くのサナトリウムまで向かうミニバスがある(ひとり10ソム・行き先表示はアクス-AKU-CYYとなっていると思う)。アルティン・アラシャン分岐点では、ロシア語の小さな標識があり、右の砂利道を行く。歩いていれば運がよければ通りがかりのジープに一人100ソムで乗せてもらえる。アルティン・アラシャンまで歩けば、約5〜7時間。

オプション2:カラコルの町中のバスターミナル(One thoughsand and one night cafe 前)からアクス(AKU-CYY)行きのバスに乗り(ひとり5ソム)、終点からアルティン・アラシャン分岐点まで約4キロ舗装された道沿いに歩く(又はヒッチハイク)。アルティン・アラシャン分岐点で右の砂利道を行く。歩いていれば運がよければ通りがかりのジープに一人100ソムで乗せてもらえる。アルティン・アラシャンまで歩けば、約5〜7時間。

オプション3:この方法は高くつくので、時間がないか、絶対歩きたくないという人にしかお勧めできない。ヤク・トゥル・ホステルでは、ジープの送迎と一泊3食付で一人25ドルのパッケージツアーがある。

ジェティ・オグズ渓谷
カラコルから25km西にあるのがジェティ・オグズ渓谷だ。渓谷の入り口には、独特の赤い巨大な砂岩があり、地元では一箇所では女性の心臓が裂けた形をしていて、もう一箇所では7頭の牛が並んでいる形をしているといわれている。これらの奇石群の近くに古いソ連時代のサナトリアム(温泉保養所)があるが、試したわけではないが自然の中で入るアルティン・アラシャンの温泉小屋とはまったく様子が違い、病気療養に来るような雰囲気である。入り口から渓谷を6キロ登った所で、ある日ユネスコとNovinomadの主催でフードフェスティバルが開かれた。カラコルにいた観光客は全員招かれ、ただで地元6種類の民族料理(キルギス・ウイグル・ウズベク・・ドゥンガン・ロシア・タタール)を堪能し、最後にどの料理が一番おいしかったかを投票した。それぞれの民族を代表する6家族が腕によりをかけて作った料理は、見た目にも美しく、そして味は一つだけ選ぶのが難しい程どれもおいしかった。

ジェティ・オグズ渓谷への行き方
カラコルからジェティ・オグズ渓谷行きのバスが一日に2回出ている。私達はタクシーで行き、渓谷の入り口で4時間待ってもらって一日500ソム(US$11)だった。しかし歩いてみて分かったのだが、この渓谷沿いの道はアルティン・アラシャンの道とは違い比較的平らで道が良いので、普通のタクシーでもかなりの距離を行く事が出来る。

ジェディー・オグズ渓谷で開かれたフードフェスティバルでは、この地域に住む6つの民族を代表する6家族が腕によりをかけて自慢の民族料理を作り、観光客が審査員となった。それぞれ独特の味付け飾り付けでどの料理もすばらしく、審査員としての私達の仕事はかなり難しかった。この写真はタタール人の料理。
ジェディー・オグズ渓谷で開かれたフードフェスティバルの開会式で歌う、素晴らしい声の持ち主は、すてきなキルギス女性。
ジェディー・オグズ渓谷で養蜂家から蜂蜜を買うのは、簡単ではない。キルギス共和国での経験は似たような事が多いが、蜂蜜ワインで酔っ払った養蜂家が、ペットボトルに1キロ分の蜂蜜を入れている間に、まず自家製の蜂蜜ワインを勧められ、スイカを一切れづつ渡されて、いろいろな質問をされた。そして最後に家族全員で記念撮影。
キルギスのヨルタはあちこちで見かける。この道路脇のヨルタでは、通りがかりの人々に飲み物やスナックを売っている。

カラコル渓谷からアルティン・アラシャン渓谷へのトレッキング

カラコル渓谷はカラコルからすぐ南に行った所にある。カラコル渓谷は国立公園になっており入り口でUS$5の入場料を取られる。国立公園入口近くまで市バスが走っている。私達はカラコルからタクシーで国立公園に入ってから約10キロ車で入った(180ソム)。ジープを使うと約20キロ車で入ることが出来る(言い値が約30ドル)。

私達はタクシーを降りた後、ゆるやかな道を約10キロ程登りだした。地図によると橋を2つ渡った後で、地図にはのっていない橋を渡ると第2日目に到着するアラクル湖への登山道に行けるはずである。しかし地図にのっている2つの橋の姿はまったくなく、偶然通りかかったロシア人登山客3人に教えてもらった丸太を渡ってアラクル湖への登山道を見つけられた。ここからは地図によると大きな川沿いに登るはずだが、川の姿はまったく見えなかった。後から分かったのは川は瓦礫の下を通っているようだ。その日の水源が見つかるのか不安に思いながら2時間程急な山道を登ると、きれいな湖にたどり着いた。もちろんこの湖も地図にはのっていない。第一日目はこの湖の近くでテントを張る事にした。今日は一日中すばらしい景色が続いたが、このキャンプ地の景色がいちばん雄大で美しかった。

第2日目は不幸な出来事が待っていた。1時間程歩いた所で間違えた道を登り出したのだ。分かれ道で大きな石を重ねた目印のある方を選び、まさか行き止まりの道に目印を置くはずがないと思ったのが間違えだった。次々と現れた目印を追いながら、約5時間足場の悪い瓦礫道を登りつづけてこれは行き止まりだと気が付いたのだった。その日は昨日のキャンプ地から1時間しか離れていない所にもう1泊するはめになった。実りのない一日だったとはいえ、やはり景色はすばらしかったのがせめてもの救いだ。しかし食料も少なくなってきたし、アラクル湖から道を間違えてアルティン・アラシャンまでたどり着けずにもと来た道を戻ったというイスラエル人カップルにも会ったので、目的を達成出来ずに引き返す可能性もかなり大きい。

第3日目は、アルティン・アラシャンまでの長い長い道のりが待っていた。11時ごろに昨日の夜キャンプするつもりでいたアラクル湖にたどり着いた。遠くに見える氷河から水が流れ込み、不思議な色の湖だ。こんなにすばらしい景色の所なのに、人に一人も会わないので、もし一人で歩いていたらあまりの自然の大きさに圧倒されて、怖い気持ちになっていただろう。湖からは案の定道が3つに分かれていた。一番明らかな石を重ねた標識のある道はすぐに上に急に登りだした。この道はなんとなく違う気がしたので、今回は慎重に湖の100メートル程上の道を湖に沿って1時間程歩くと、左手に峠が見えた。高度の影響と重い荷物のせいで、峠までの登りはかなりきつかったが、峠にたどり着いた後の景色は今までの景色よりもすばらしく、ここまでがんばってきて本当に良かったと思えることが出来た。峠では運良くガイド付きでアルティン・アラシャンから日帰りで来ている登山客グループに会え、これで今日はもう安心と思ったのはちょっと早かった。馬に荷物を積み、一人は馬に乗って降りだした4人にはまったく着いていけず、途中ちょっと濡れながら川を越えなくてはいけない所があるのだが、その川を越えなかった為、迷子になった牛や人間が通った形跡のある道を生い茂る木々を掻き分けながら数時間歩くはめになってしまった。しかしがんばれば温泉が待っているという一心で、歩き続け、朝歩き始めてから11時間後の夜8時にようやくアルティン・アラシャンにたどり着いた。今回はヤク・トゥルが持つ小屋に泊まり、ガイドが料理してくれた温かい夕飯を楽しんだ。

翌日は朝食を食べた後、のんびりとアルティン・アラシャン分岐点まで山を降り、そこからバスでカラコルへ戻った。前日の温泉のおかげでこの日歩く気力が出来たと思う。道さえ間違えなければ、このルートは比較的簡単に3日間で歩く事が出来る。
途中でロシア人の若者が分かりづらい分かれ道の場所を教えてくれたので、第一日目のキャンプ地までは問題なく到着する事が出来た。景色も素晴らしくここままでは楽勝で目的地のアツティン・アラシャンに2日後に到着するだろうと思ったのはまだ早かった。翌日にはすでにつらくて長い回り道が待っているのであった。
第一夜のキャンプ地となった小さい湖は、貴重な水源でもあった。
石を重ねた登山路の目印を追って足場の悪い岩場を5時間かけて登ったら、3600メートル地点で行き止まりだという事に気がついた。この写真2枚は道を間違えた事を気付く前の私達。往復8時間かけて昨晩からまったく進歩がなく、しかも一日の重労働で二人ともばてばて。来た道を戻ろうかという考えも浮かんだが、翌日がんばってアタ・クル湖へ向かい、峠を越えてアラシャン・バレーへ到着した。
アタ・クル湖は氷河の水が溜まって出来る湖で、その色は幻想的である。ピクニックやキャンプ地として最適。奥に見えるのが氷河。

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