インド | バラナシ・アグラ・ジャイプール・デリー | 2001.12.4 - 2001.12.17 |
世界旅行を準備している段階では、インドは訪れたい国のリストには入っていなかった。タージマハールは一生に一度は見てみたいけど、あまりの人の多さ、汚れのひどさ、観光客を狙ったあくどいビジネスのひどさを人づてに聞き、おそれをなしていたのだ。しかしインドの隣国のネパールに2ヶ月も滞在するのだから、少なくともタージマハルは見てみたいなあという気分になり、また他の旅行者からあれほどいろいろなエピソードを聞いた喧騒の様を自分の目で見てみたいという気持ちになってきた。結果的には、ネパールビザの切れた翌日にネパールを出国し(期限を過ぎて滞在した罰金は1日分でUS$2)、陸路でインドへ向かった。
インドへの道
カトマンドゥから約11時間の夜行バスに乗り、翌日朝7時ごろ国境の町に到着した時に一番驚いたのはその汚れだった。今まで過ごしたネパールの町や村でここまでごみがちらかり、建物がぼろぼろだった所はなかった。そしてその汚れはインドに入ると一段とひどくなり、バスの窓から見渡す限りごみが広がるようになった。途中のバス停でごみ箱はどこかと聞いたら、数人の人がごみの散らかる道路を指した。かれらの感覚では外ではどこでもごみを捨てて良いようだ。確かにインドは巨大なごみ箱という印象だった。そしてこの印象は2週間の滞在中くつがえされる事はなかった。
国境から乗ったバスもひどかった。カトマンドゥでバラナシまでの「豪華」ツーリストバスの券をかなり高いお金を出して買った。ネパール側では、多少汚れてはいるが問題なく寝ることが出来るバスであった。インド側ではむちゃくちゃ汚れていて硬くてほとんど壊れたベンチシートのローカルバスに乗せられた。この硬いベンチシートに12時間座った後にバラナシに着いた時には、お尻は完全にしびれていて、あと数日間座らなくても良いという感じだった。
バラナシ:聖なる町
バラナシはインドでもっとも聖なる町のひとつである。その水で体を清めると犯した罪が洗い流されると言われる聖なる河ガンジス河には、全インドから巡礼者がやってくる。朝日の昇る時刻にガンジス河へ行ってみると、巡礼者が一心に沐浴している姿が見られる。朝靄の中、広大なガンジス河の岸で、沐浴する彼らの姿は神秘的である。
しかし、よく見てみるとガンジス河はかなり汚れている。そして、どこからともなく異臭が漂ってくる。河岸ではところかまわずおしっこをしているので、まずおしっこの臭いがひどい。同じ河で洗濯している人もいれば、体を洗っている人もいる。牛が水を飲んでいる姿も見える。この河岸で火葬されたあとの灰もガンジス河に流されるし、寿命をまっとうできなかった人々の死体は、火葬される事なくそのまま河に流されるという。また河のすぐ近くには人がようやく行き交うことが出来る細い路地が迷路のように広がっている。この路地には数多くの牛ややぎが行き交っているので、動物の糞や尿が散乱していて、これらと共に人間が作る排水も最終的にはガンジス河へ流される事になる。しかし、こういう臭いや汚れも巡礼者の人々にはまったく気にならないようで、一身に沐浴を続けて河の水を口に含んでいるのであった。
アグラ:タージマハール
バラナシからの夜行列車は思ったより快適で、13時間でタージマハールのあるアグラ・フォート駅に到着した。バラナシの駅で電車の券を買ったとき、信じられない位時間がかかったので、今日はアグラ駅に到着してすぐに次のチケットを買う事にした。予約オフィスが開くまで1時間待って、ドアが開くとともに他のインド人と列を争い(この駅には外国人専用のチケットオフィスがない)、ようやく自分達の番がまわって来た時に分かった事は、アグラからジャイプール行きの列車はこの先1週間以上全て満席だという事だ。係員の人にバスを勧められ、とりあえずジャイプールからニューデリー行きのチケットを購入して、今夜の宿を探しに行く事にした。
インドの人力車やタクシーの運転手やホテル等の客引きのしつこさとあくどさは、数多くの旅行者から話に聞いていた。そしてその期待は裏切られる事はなかった。毎日彼らとやり取りするのは、本当に疲れる。今日もチケット売り場で、「僕も電車券買うんだ」と嘘を言って親しくまたしつこく話し掛けてくる客引きもいた。
タージマハール近くの安宿にチェックインして朝ご飯を捜しに外に出てみると、町の汚さに改めて驚く。ここにたどり着くまでにもうすでにごみを山ほど見て、そろそろ汚れを見慣れてくる頃とも思われるのだが、私達が宿泊した地域の汚れに勝てる所はいまだかつてなかった(2週間のインド滞在中ここよりきたない所はなかった)。とりあえず裏道をずっと歩いて、地元の人達が並んで買っていた辛い揚げパンとカレーを買って朝食とした。食中毒になるかならないかは12時間たたないと分からないが、とりあえず味は良かった。
町も好きになれないし、宿も格安だが安心出来ないので、タージマハールを今日中に見て予定を早めて明日は次の目的地ジャイプールへ向かう事にした。電車のチケットが買えなくて本当に良かった。夕暮れ時のタージマハールをペストコンディションで見る為に、私はウェスがアグラ・フォートを見学している間昼寝をした。外国人の間でむちゃくちゃ評判の悪い外国人用入場料は健在で、インド人は入場料が20ルピー(約50円)なのに、外国人は750ルピー(約1960円)も取られる。
タージマハールを正面から初めて見た時には、その均整の取れた美しさに心を動かされた。しかし正面から見た姿が一番美しく、期待していた内側や細かい装飾には思ったほど感動しなかった。勝手にスペインのアルハンブラ宮殿のように広大な敷地に見所がたくさんあると想像していたのだが、実際には見る所は限られていてかなり期待はずれだった。一生に一度は見たいと思っていたタージマハールを見れたことは満足だったが、二人で安宿の15泊分の価値はなかったと言わずにはいられない。
ジャイプール:砂漠の町
ジャイプールは乾燥していて緑も少なく、道には牛車に代わり、巨大ならくだが荷物を引いている姿が見られる所など、砂漠地帯にいることを実感させられる。またジャイプールは職人が作り上げる工芸品でも有名である。ウェスはジャイプールの町で手作りの工芸品を見て気に入ったものがあれば、買ってアメリカに送ろうと考えていた。しかしピンクシティーと呼ばれるピンク色(実際にはピンクというより赤茶色)に建物が全て塗られている町の中心にあるバザールに行ってみると、客引きがあまりにもしつこくてどの店にも入る気がしなくなってしまった。この日の唯一の買い物は、ラッシー屋さんで買った10ルピー(約25円)のおいしいラッシー(冷たいヨーグルトの飲み物)だ。
前もって券を買っておいたジャイプールからニューデリー行きの電車は5日先だ。元気があれば、ジャイプールから10時間位かければ見所がいくつもある。しかし私達にはその気力がなく、結局ジャイプールで5日間のんびりと過ごしてしまった。ジャイプールでは奮発してインドでは中級クラスに入る清潔で落ち着ける宿に泊まったので、余計にホテルから出たくなくなってしまったのもある。リキシャーの運転手につきまとわれたり、「お前達はなんでけちしていつも歩くんだ」とホテル前にいつもいる運転手に悪態つかれたりする事無く、屋上からのんびりと路上で繰り広げられる寸劇を見るのがなんとも面白かった。
デリー:友人との再会
デリーの空気の汚れのひどさは何人かの人から聞いていたのだが、話に聞くのと実際に経験するのとは大違いだ。デリーの駅につくと公害で数十メートル先がかすんで見えなかった。しかし町の中心部は他の町と比べて驚くほど近代的できれいだった。ビジネス街には牛の姿も見られない。お店も品のある高級品を扱うところが多く、ウィンドーショッピングをしていても楽しいし、行くてを邪魔する客引きの数もかなり少ない。特に高級サリーを取り扱う店は、サリーの質の良さ、品のある色合いの美しさにため息が出るほどだった。買い物に来ている見るからに上流階級のご婦人という感じの女性たちのサリーを見るのも楽しかった。
デリーでのハイライトは、シンガポール駐在時代のウェスの会社からの友人、ラクシュマナ一家と会う事だ。私もシンガポールで何度か家におじゃまして、おいしいインド料理をご馳走になったことがある。奥さんのタニュージャのご両親がデリー郊外に住んでいて、ラクシュマナ一家はちょうど里帰りでシンガポールからデリーに帰っていたのだった。タニュージャの実家で一泊お世話になり、またまたおいしいインド料理をご馳走になった。翌日はミニバンを借りてデリーの市内観光に連れて行ってもらった。彼らと過ごした日はインド滞在中でも特に楽しい思い出となった。
デリーから15キロ南にある、Qutab Minarはイスラム建築の代表作である。塔の高さは73メートル、直径は下が15メートル一番上で2.5メートルあり、近くで見ると圧倒される大きさである。 | |
同じくQutab Minarを近くから見た所。砂岩には、アラビア語の文字と繊細な模様が彫り込まれている。 |
「今は夜遅いから夜間追加料金が必要」(国境は24時間オープンしている)
「ネパール側のイミグレーションは閉まっているけど、400ルピーくれたら特別に開けてもらうよう頼んであげる」(ネパール側の国境も24時間オープンしている)
「本体なら罰金を何ドルも取るはずだけど、特別に通してあげるから400ルピー頂戴」(ビザ有効期限内に出国するのだから、罰金を取られる理由はない)
「今日はもう遅いから、明日来ればいい。この4人が今日来た事きちんと覚えているから」(明日来たらいろいろと理由をつけてビザが切れた罰金をとるつもり)
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